坊っちゃん列車は、伊予電鉄の松山市内線で走っている列車で、松山の名物的存在となっています。
松山の有名な観光地である道後温泉まで走り、観光客に人気のある列車です。古町〜JR松山駅前〜道後温泉と、松山市駅前〜道後温泉の間で運転されています。JR松山駅前に停まるものは1日3往復くらいしかないので、松山市駅前から乗ったほうが便利です。(こちらは1日10往復以上ある)
坊っちゃん列車は一乗車300円ですが、市内電車乗り放題とセットの切符が500円で売っているのでこちらが断然お得です。切符は明治風の硬券で、感じがでます。
松山市駅前に停まっている坊っちゃん列車です。隣に停まっているのは最新型の低床車です。路面電車とSLが並ぶ光景はここ松山でしか見られません。
といってもこの機関車、見た目はSLでも実はディーゼルカーです。町のど真ん中をSLが煙を吐いて走るのはさすがに無理があるようです。しかし、機関車は細部まで忠実に再現されていて、雰囲気は十分楽しむことができます。機関車の後ろには2両の小さな客車(1両の場合もある)が連なっています。この客車、長さはわずか4.2メートルしかありません。在来線の一般的な車両が約20メートルなので、それの約5分の1の長さです。
松山は明治時代、四国で最初に鉄道ができた町で、坊っちゃん列車は当時の列車を再現したものです。夏目漱石は、四国に赴任した経験をもとに書いた小説「坊っちゃん」の中で、「マッチ箱のような汽車だ」と当時の列車を表現しています。それがこの「坊っちゃん列車」の由来になっています。
改札が終わって車内に乗り込むと、マッチ箱という表現がぴったりと思えるような空間でした。内装は木でレトロな雰囲気もあり、程よい狭さがかえって心地よい感じががしました。とはいえ、車内にはクーラーがありません。夏に乗るには結構暑いですが、昔は当然クーラーなどは無かったわけで、雰囲気が出てかえって良いと思いました。乗り心地は普通の鉄道というよりも遊園地の乗り物のような感覚です。
走行中は車掌さんが車窓の見どころを案内してくれます。列車は松山のメインストリートを走り、愛媛県庁、松山城などが見えます。それにしても市電のレールをレトロな客車が走るというのはなんだか不思議な感じがします。鉄道ファンとしてはむしろそちらが印象に残りそうです。
わずか15分ほどで終点の道後温泉に着きます。道後温泉駅も坊っちゃん列車に負けず、観光地の玄関口にふさわしいレトロなデザインです。
道後温泉駅に着いた坊っちゃん列車は、機関車の付け替え作業が行われ、その様子を見学することができます。驚くことに客車や転車台を動かす作業は全て人力で行われます。客車が小さいので、ブレーキを解除すれば簡単に動かせてしまうようです。付け替え作業後は、出発時間まで駅前広場に停車します。記念撮影をする旅行者へのサービスのようです。
道後温泉駅から歩いて商店街の中を歩いて5分くらいのところに道後温泉本館があります。100年以上の歴史を誇る建物は風格があります。見た感じは温泉というよりお寺に見えます。
料金は利用する浴室や休憩室によって4つに分かれています。自分は「神の湯二階席」(800円)を利用しました。これは浴室「神の湯」と、休憩室の大広間を利用することができます。温泉は、浴槽が深めで泳げそうな感じがしました。小説「坊っちゃん」には主人公が温泉で泳ぐ場面があります。実際にそうやって泳ぐ人がいるのか「坊っちゃん泳ぐべからず」という看板が掲げられていました。温泉のお湯だけでなく昔ながらの浴室の雰囲気や、立派な陶板画にも注目したいところです。休憩室では貸し浴衣、お茶とお菓子のセットがついているのでゆっくり休憩できました。部屋は昔ながらの造りでクーラーはなく代わりに大きな扇風機が回っていました。また、今ではあまり見かけない瓶入りのコーラやジュースを売っていました。
ここの良いところは安易な改造などをせず昔の雰囲気を残すよう努力がなされていて、日本の温泉文化の歴史に触れることができることだと思います。
坊っちゃん列車の由来にもなっている夏目漱石の有名な小説「坊ちゃん」。小学生の時に一度読んだことがあったのですが内容をほとんど読んでいなかったので、松山へ行く途中の列車の中で改めて読みました。あの夏目漱石が大衆に親しまれる小説を目指して書いただけあって、明治時代の作品とは思えないほど読みやすく、面白い作品です。長さも程よく、ライトノベルのような感覚で読むことができました。主人公は無鉄砲そして単純な性格で、自分が見たものに対して心の中でいちいちツッコミをいれる癖があるのですが、そのツッコミが絶妙だったりします。さらに赤シャツや山嵐などの個性的な登場人物などが話を盛り上げます。
話自体は大変面白いのですが、内容はあまり松山のイメージアップになるようなものではありません。まず、東京出身の主人公は松山を田舎だと見下しているところがあります。そして、松山に教師として赴任した主人公は、生徒達にいじられたり、下宿を追い出されたり、教頭の赤シャツにだまされたりとけっこう悲惨な目に逢って、結局1年も経たないうちに東京へ帰ってしまいます。この「坊っちゃん」を今では松山の観光PRに利用していたりするのですが、とりあえず有名なら何でもいいってことなのか、松山の人が心が広いからなのか、地元の人はどう思っているのか一度聞いてみたいなあと思いました。
↑ 道後温泉本館隣のオープンカフェで見つけた、「坊っちゃん」登場人物の等身大人形。このゆる〜い感じがたまりません。登場人物の雰囲気がよく出ています。
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